【ICT 企業向け】適性や資質を推し量るための 7 のマトリックス
本記事では、向き不向き・強み弱み・資質を考慮した「人員の教育・アサイン」を支援するためのマトリックスを 7 つほど提供する。
適性や資質を推し量るためのマトリックス と名付けた。
これらは私が独断と偏見でまとめたものである。
- はじめに
- 1: 技術への興味と体系的知識
- 2: ワークライフバランスへの渇望と養育への渇望
- 3: クリエイター志向とプログラマー志向
- 4: 対負債性能と有能さ
- 5: アウトプット力と非同期への適応性
- 6: ICT リテラシーの有無とググるスキルの有無
- 7: 自律性と自立性
- おわりに
はじめに
このマトリックスの意義について背景ベースで簡単に説明しておく。
時代は全員画一から各個配慮へ
人材を画一的に扱うのは前時代的である。人には向き不向き、強み弱みというものがどうしても存在する。向いてないことや弱いことに費やしても意味がない。どころか進捗や成果が得られない分、害悪ですらあるだろう。
何に注力するべきか。何を諦めるべきか。
これらを考慮して各人の方向性を決めていくのは、もはや当たり前のことだ。
遅れがちな配慮とその対策
しかし、このような方向性は(周囲や本人が適性や資質を自覚してないゆえに)最初から決められないことが多い。結局「とりあえず画一的に扱ってみて様子を見る」ことになってしまう。これをもどかしく感じるのは僕だけだろうか。
可能なら早期から判断したい。そうすれば新人や後輩の教育、チームメンバーの業務アサインといったことも効率的に行えるようになるものだ。
そこで僕は、このような判断を円滑に行うために知見を貯めることにした。その一つに 適性や資質を推し量るためのマトリックス がある。
本音
……ともっともらしく書いたものの、本音を言えば単に私が「人を分類するマトリックスをつくってみたかった」だけである。
これらマトリックスは私の独断と偏見に基づいている。学術的な理論や統計的なエビデンス等に基づいているわけではない(それらを読んだ私の見解が反映されている可能性はある)。
参考というよりも読み物として楽しんでいただくのが良いかもしれない。
では能書きはこの辺にして、マトリックスの紹介に入ろう。
1: 技術への興味と体系的知識
技術的でない仕事(雑務などつまらない仕事)をやらせるべきかどうかとか、技術的にリードする人材になることが期待できるかどうかなどの判断に。
「技術に興味がある」 | 「技術に興味がない」 | |
---|---|---|
「情報系を学んでいる」 | つよつよ | とりあえず戦力 |
「情報系を学んでいない」 | つよつよ候補 | 戦力外(雑務要員) |
各軸の意味:
- 興味がある = プライベートでも学ぶレベルである
- 情報系を学んでいる = コンピュータサイエンスを大学や専門で学んだ(学んでいる)
各象限の意味:
- つよつよ
- 興味がある/学んでいる
- 技術的に強い人材で、えこひいきしてでも尊重・優遇するべき
- この人に雑務などくだらない仕事をさせちゃいけない
- とりあえず戦力
- 興味はない/学んでいる
- 学んでいた分、基礎素養はあるので戦力にはなりやすい
- 興味が無いので伸びは期待できず、牽引役レベルには至れない
- つよつよ候補
- 興味はある/学んでない
- 現時点では弱いが、好きこそものの上手なれ
- 早ければ数年以内でつよつよに足突っ込む(でも芽が出ず至れない場合も)
- 戦力外
- 興味がない/学んでない
- 雑務要員
- 優秀な人なら戦力になることもあるが突貫的(例:地頭ゴリゴリでクソース書いて乗り切る)で負債を残しやすいことには注意
2: ワークライフバランスへの渇望と養育への渇望
社畜(仕事に没頭して長時間働く)へのなりやすさを判断するのに。
「WoL を大切にする」 | 「WoL を大切にしない」 | |
---|---|---|
「養育欲求が強い」 | ストロングプライベート | 熱心だが不安定な兵隊 |
「養育欲求が弱い」 | ソロ充 | 熱心な兵隊 |
各軸の意味:
- WoL を大切にする = 毎日定時間以内の業務拘束であることを強く要求し、そのためなら主張や衝突も厭わない
- 養育欲求が強い = 子育てをしている、またはチームや部下の面倒を見る・育てることが好きで、人生において「無い」はありえない
各象限の意味:
- ストロングプライベート
- WoL大切/養育強い
- 守るものが多い上に意志も強いので、社畜に仕立てることは期待できない
- 熱心だが不安定な兵隊
- WoL大切でもない/養育強い
- 深く考えずとりあえず「恋人つくる」「結婚する」「子供つくる」をした人たち
- 社畜に仕立てやすいが、家庭事情などを抱えておりその都合でやや不安定(世話や記念日で休む、家庭が大事なので転勤・退職する等、会社よりも家庭を選ぶ判断をする)
- ソロ充
- WoL大切/養育弱い
- 自分のために生きている。熱心や趣味や譲れない信念などを持っており社畜は期待できない
- ただし熱中や没頭の対象が仕事に向かえば社畜になるケースも
- 熱心な兵隊
- WoL大切でもない/養育弱い
- 守るものがないので社畜に仕立てやすい
3: クリエイター志向とプログラマー志向
クリエイターあるいはプログラマーという「資質」の有無から「雑務要員かそうでないか」を判断するのに。
「クリエイター志向である」 | 「クリエイター志向でない」 | |
---|---|---|
「プログラマー志向である」 | つよつよ | 技術肌 |
「プログラマー志向でない」 | 創造者 | 雑務要員 |
各軸の意味:
- クリエイター志向である = 熱心な仕事や趣味として一つ以上の「ものづくり」がある。ものづくりしない死ぬタイプ。
- プログラマー志向 = 三大美徳を持っている、手段・技術・効率にこだわる
各象限の意味:
- つよつよ
- クリエイター志向/プログラマー志向
- 創造性、技術へのこだわり、手段の工夫、とすべてを持つ「資質を持ちし者」
- この人の邪魔をしちゃいけない。この人は好きにやらせる
- 技術肌
- /プログラマー志向
- 刺激的・挑戦的で技術的な課題を与えると良い
- 課題は最初から用意されている方が性に合っている(明確な課題への没頭に集中させる)
- 創造者
- クリエイター志向/
- 一般人が通常知ることのない「創造」の知見、視点、手段を知る者
- 戦略的・創造的な仕事を任せたい
- 雑務要員
- /
- 一般人
- 雑務はこの人にやらせる(他のタイプの足を引っ張らないよう支えるのがこの人の役割)
4: 対負債性能と有能さ
たとえ有能であっても対負債性能が乏しければ仕事を任せるべきではない(かもしれない)。このあたりを判断するのに。
「負債に備える」 | 「負債に備えない」 | |
---|---|---|
「有能である」 | 備える有能 | 備えない有能 |
「無能である」 | 備える無能 | 備えない無能 |
各軸の意味:
- 負債に備える = 技術的負債に最初から備える。最初からきれいに設計する、リーダブルなコードを書く、テストを書く、自動化や省力化をする、ドキュメントを書く等
- 負債に備えない = たとえ突貫やクソースでもスピーディーに仕上げることを重視。むしろ下手に備えるくらいなら先に進むべきだと考えているタイプ
各象限の意味:
- 備える有能
- 負債に備える/有能である
- 結果を出しつつ負債も未然に防いでくれる稀有な存在
- この人の意見や基準は軽視しちゃいけない。わからないなら(たとえ歩みが遅く見えても)任せるのが無難
- 備えない有能
- 負債に備えない/有能である
- 結果を出してくれるが手段がひどく、地頭ゴリ押しの突貫クソースは当たり前
- この人に頼むのは諸刃の剣(たとえるなら借金するようなもの)
- 備える無能
- 負債に備える/無能である
- 無いよりはマシ
- この人だけではプロジェクトはたぶん間に合わないか、よほどゴールが低くなる
- 備えない無能
- 負債に備えない/無能である
- 仕事任せちゃダメ
5: アウトプット力と非同期への適応性
発信・整備・普及啓蒙などアウトプットを要する仕事の適性を判断するのに。
「アウトプットする」 | 「アウトプットしない」 | |
---|---|---|
「非同期が好き」 | 非同期的アウトプッター | ネット弁慶 |
「非同期は好きじゃない」 | 同期的アウトプッター | リアルの住人 |
各軸の意味:
- アウトプットする = GitHub/Qiita/ブログ/Twitter等で当たり前に発信している、作業過程や Dotfiles 等も全部オープンにする等
- 非同期が好き = 非同期コミュニケーションが好き。Slack などチャットによる効率的な非同期コミュニケーションは当たり前にできる。口頭コミュニケーションが無くても(たとえば一日一言も発声しなくても)生きていけるタイプ
各象限の意味:
- 非同期的アウトプッター
- アウトプットする/非同期的
- 発信・整備・普及啓蒙の仕事にも向いている上、対面や口頭が無くてもいけるというつよつよ
- 好きにやらせるべき。特に同期的コミュニケーションを強要して邪魔しないこと
- ネット弁慶
- アウトプットしない/非同期的
- 対面や口頭よりもチャットが好きなタイプ
- 素質はあるので刺激・教育すれば非同期的アウトプッターになれるかも、だがその気のない口先だけのタイプであることも
- 同期的アウトプッター
- アウトプットする/非同期的じゃない
- 発信・整備・普及啓蒙の仕事にも向いているが、対面・口頭での監督、相談、交流が無いと生きていけない
- 同期を拒絶しない、どころか好むこともあるくらいなので、(非同期が得意でない者にとっては)非同期的アウトプッターよりは扱いやすい
- リアルの住人
- アウトプットしない/非同期的じゃない
- 一般人。アウトプットもしないし非同期も知らない
- この人に発信・整備・普及啓蒙の仕事をさせるのは分が悪い(他のタイプに任せること)
6: ICT リテラシーの有無とググるスキルの有無
エンジニア基準で自立的に働ける素養や足を引っ張らない素養の有無を判断するのに。
「ICT リテラシーがある」 | 「ICT リテラシーがない」 | |
---|---|---|
「ググれる」 | エンジニア | ググり厨 |
「ググれない」 | 有能なググレカス | 無能なググレカス |
各軸の意味:
- ICT リテラシーがある = モダンな Web 系企業、スタートアップ、GAFA などの働き方水準についていくリテラシーがある(ICT の基礎素養、ツールやガイドラインへの適応、公式ドキュメントを読める、OSS やオープンな文化を知っている etc)。言い換えるならエンジニアという生き物の主張を理解できる
- ググれる = わからないことを一人でググって調べて解決できる。答えが見つかるようなキーワードを思い浮かべたり試したりすることにも慣れている
各象限の意味:
- エンジニア
- リテラシーがある/ググれる
- 問題無し
- ググり厨
- リテラシーがない/ググれる
- ググるのは得意だがリテラシーが欠けており無駄に時間をかけすぎる、一人で抱え込みがち等があるので、適宜フォローしてあげる
- 教育対象。リテラシーを体系的に学ばせる
- 有能なググレカス
- リテラシーがある/ググれない
- 単にググり方を知らないだけなので大した問題ではない
- 教育対象。ググり方を教える
- 無能なググレカス
- リテラシーがない/ググれない
- 一番足を引っ張る存在
- 教育対象。未経験新人みたいにじっくり教育が必要。その気のない年寄りとかだと救い様がないので必要なら切り捨てる選択肢も
7: 自律性と自立性
一緒に働く際の働きやすさを判断するのに。
「自律性がある」 | 「自律性がない」 | |
---|---|---|
「自立性がある」 | 大人 | 使いやすい有能 |
「自立性がない」 | 子供 | 使いやすい無能 |
各軸の意味:
- 自律性がある = 我が強い。確固たる価値観と信念をもとに厳しく自己管理している。規律的、規則的、健康、頑固 etc
- 自立性がある = 怠慢で人の足を引っ張らない資質。予定や締切を守る、自力で調べ考える、自分で決断する、計画/戦略/仮説/検証に基づいて行動できる etc
各象限の意味:
- 大人
- 自律できる/自立できる
- この人は一人で動けるので尊重する、放任する
- 下手にコントロールしようとすると十中八九こじれるので、つまらない立場や見栄でコントロールしようとしないこと
- 使いやすい有能
- 自律できない/自立できる
- 一人で動けるが、我は強くないので扱いやすい
- 革新や刺激を求めないのなら、このタイプで固めて仕事するのが無難
- 子供
- 自律できる/自立できない
- 我が強いくせに一人で完結できず足を引っ張ってくるという困りもの
- 有能なら手間暇かけてでも支えるべきだが、無能なら強引にでもコントロールして被害を抑えたい
- 使いやすい無能
- 自律できない/自立できない
- 我も強くないし、一人で動けず足も引っ張るという
- とはいえ若いうちはこれが(疑いもなく学校や日常を無難に生きてきたケースの)普通。年取ってもこれなら厄介だが、我が強くない分、コントロールはしやすい
おわりに
適性や資質を推し量るためのマトリックスを 7 つほど考えてみた。何かの参考や刺激になれば(なるのか!?)幸いである。