嗜好、指向、志向の違いを一言で
似た言葉として嗜好、指向、志向がありますが、紛らわしいのでまとめてみました。くどくど書いても煩わしいので、最初に一言で結論を書き、その後で細かい話をずるずると書いてみました。
一言でまとめると
- 嗜好:(特に摂取品に関する) 趣味や好み
- 志向:人の意識 が、ある方向に向かっていること(主体は自分)
- 指向:何らかの物、概念、性質 が、ある方向に向かっていること(主体は物や概念や性質)
以下、詳しく書いていきます。
辞書の定義を
辞書の定義を見てみましょう。
国語辞典
コトバンクのデジタル大辞泉より抜粋してみます。
ある物を特に好み、それに親しむこと。好み。主に飲食物についていう。「嗜好が変わる」「日本人の嗜好に合う」
名](スル)ある方向・目的に向かうこと。また、方向や目的を指示してその方に向かわせること。志向。「輸出先として指向する国」「主力を激戦地に指向する」
[名](スル)意識が一定の対象に向かうこと。考えや気持ちがある方向を目指すこと。指向。「高い志向をもつ」「音楽家を志向する」「上昇志向」
これを読むと、嗜好と指向・志向の区別はわかりますが、指向と志向がよくわかりませんね。指向の説明に志向(逆もしかり)と書いてますし……。
英和辞典
アルクの英辞郎 on the WEB より抜粋してみます。
taste
intention
指向性 directivity
指向性の directional, oriented
~を重視する
抜粋したのは一部ですが、国語辞典よりもニュアンスがわかりやすくなっています。
具体例
嗜好、指向、志向それぞれについて理解するために、具体例を 4 つほど取り上げます。
- 嗜好品としてコーヒーを嗜む
- 他にもタバコなどにも使います
- あの人は健康志向だから食事にうるさい
- 「その人の意識」が健康に向かっています
- 人の意識 が主体です
- 指向性スピーカー
- 音響範囲を絞るという方向性のスピーカー
- スピーカーというモノ が主体です
- オブジェクト指向
- プログラミング用語で、プログラムをオブジェクト(「自分の役割」と「誰に何について頼るか」を持つ単位)で捉えるというアプローチです
- プログラミング手法という方法 が主体です
- 性的指向(sexual orientation)
- 学術的には性的指向が正しく、性的嗜好、性的志向は間違いです
- 嗜好(趣味や好み)でもなければ、志向(自分の意識)でもありません
- 人間の性質として、どの性に向いているかを指しています
- 人の性質 が主体です
おぼえ方
「嗜好」は趣味、「指向」はモノや概念や性質などの向き、「志向」は人の意識の向きです。
嗜好については、覚えやすいかと思います。
問題は指向と志向ですが、志向は意志の志、つまり「こころざし」というわけで「人の意識」です。そうなると、残りの指向がモノやら概念やらその他ですね。
おわりに
以上、紛らわしい嗜好、指向、志向についてのまとめでした。
これでもう迷わない!