レビューは三種類あると思う
レビュー(Review)という考え方は、GTD に限らず汎用性が高いと思う。そうだとして、ではレビューは何種類に分けられるかが気になったので、考えてみた。
結論を言うと「未読」「進捗」「方向」の 3 種類
以下 3 種類。
- 未読レビュー: 未処理の事柄を処理する
- 進捗レビュー: 取り組んでいる事柄に関する振り返りを行う
- 方向レビュー: 人生目的や人生哲学などを見直す
つまり「取り組んでないもの(未読)」と「取り組んでるもの(進捗)」と「取り組み方(方向)」という分け方。
そもそもレビューとは
- 個人的な 再検討、見直し、振り返りといったニュアンス
- 集中可能で、十分に確保された時間で行うのが望ましい
- レビューのポイントは以下二点
- レビューの対象となる事柄は 事前に固めておく こと
- レビュー対象は 定期的にレビューする こと
レビューというとソフトウェア開発におけるコードレビュー(複数人で品質をチェックしたり議論したりする行為)を思い浮かべるかもだが、ここでは想定しない。
また界隈や体系によっては、もっと狭義の意味を指すこともある。たとえば GTD におけるレビューは、コンセプトからやり方までかなり詳細につくりこまれている。
未読レビュー
未処理の事柄を処理するためのレビュー。
概要
(GTD やタスク管理など)ある程度ハックや自己啓発に取り組むと必ず遭遇するものの一つが「とりあえず溜めておく」という考え方。動物みたいに目先のものに即時対処するのではなく、(現状を崩さないために新たに来たものはとりあえずすべて)溜めるだけにする、とも言える。
これは逆を言えば 溜めたものは後で処理する必要がある とも言え、この「溜めていたものを処理すること」が未読レビューにあたる。
未読レビューの実践方法
「溜め方」と「溜めていたものを処理する方法(未読レビュー)」が必要になる。
「溜め方」については、自然と溜まるか、秒単位で溜められる方法が望ましい。アナログで言えば指定箇所に置く(例:トレーに書類を放り込んでおく)とか。デジタルで言えば tameike.txt をつくっておき、溜めたいものをここに書く&tameike.txtはショートカットキーで一発呼び出しさせる&素早くメモれるようタッチタイピングも身につけるとか。電子メールで言えば「とりあえず放り込んでおくトレイ」をつくっておくとか。
「未読レビュー」については、定期的に忘れることなく行えるよう予定やリマインダーを仕込んでおく。実施頻度は状況次第。溜まるのが早ければ毎日もありえるし、逆に遅ければ週一くらいでも良い。
未読レビューの効用
とりあえず溜めたもの(後回しにしたもの)も どうせ後で未読レビューする ので忘れることはない、という 安心感 が手に入る。
未読レビューの弱点
期限が設けられている事柄(特に期限が厳しいもの)に弱い。溜めること自体は可能だが、未読レビューする前に期限が迫る or 超過してしまう。
進捗レビュー
取り組んでいる事柄について進捗を振り返るためのレビュー。
概要
気の向くままに無鉄砲に行動するだけで事を為せるケースは稀 であり、たいていは何らかの制約が課されている。制約をクリアしながら事を成すためには、いわゆる「計画」が必要だ。しかし計画を立てただけで済むはずもなく、状況が計画どおりに進んでいるかのモニタリングも併せて必要である。
この時、頭の中だけでモニタリングを完結させるのは難しい ことが多い。できるのならそれに越したことはないが、たいていはキャパオーバーして、忘迷怠が生じて、うやむや&めちゃくちゃになる。ではどうするかというと、何らかの形で計画や進捗をアウトプットし、これを見つつ修正しつつ――といったやり方になる。
進捗レビューは、このモニタリングの一つである。たとえば(あるプロジェクト xyz を達成したいとして)以下のようなことをレビューする。
- xyz の達成には全 xx タスクあり、現在 yy タスクまで終了している、この調子で行けば……
- タスク x1 と x4 が手つかずなので、次はとりあえず行動してみようか
- このペースだと期限まで間に合わないな、なんとかしないと……
- ……
要するに 「取り組んでいる事柄」について、定期的に、明示的に振り返る のが進捗レビュー。
進捗レビューの実践方法
「ブレイクダウン」と「レビュー」が必要になる。
ブレイクダウン では、レビューに必要な材料を 前もって 洗い出しておく。
レビュー では、ブレイクダウンした内容を読みながら状況を振り返る。レビューは定期的に行うのが望ましい。
進捗レビューの実践方法 > ブレイクダウン
ブレイクダウン ではゴールとタスクを洗い出す。
- 達成したいこと(ゴール) x 1
- ゴールに必要なアクション(タスク) x N
この時、タスクには以下のパラメーターもつけておくと、後でレビューしやすい。
- 締切(この日までに達成が必要 or 達成しておきたい)
- 実行順序(タスク c はタスク a と b の後にやる)
- 具体的な行動内容(Aさんに~~について尋ねる、質問内容は~~にまとめてるのでこれ使う)
- 依存タスク(タスク1はタスク2,3,4から成る)
- ……
ブレイクダウンは 箇条書き と インデント(字下げによる階層構造の表現) がわかりやすい。
ゴール: xxxxxxxxxxxxx タスク サブタスク サブタスク タスク サブタスク サブタスク サブタスク サブタスク タスク タスク サブタスク サブタスク サブタスク サブタスク ...
今現在、ブレイクダウン出来ない場合は、いったん行動してみる。行動してみることで見えてくることがある。
進捗レビューの実践方法 > レビュー
ブレイクダウンを終えた後は、定期的に レビュー を行う。
「定期的に」とは毎日、週に一度、月に一度などのこと。多すぎず、少なすぎない頻度を自分で考える。よくわからない場合はとりあえず週一で試してみて、増やすなり減らすなりする。
レビュー時の行動としては、ブレイクダウンした内容を読みながら判断・修正・行動を行う。挙げればきりがないが、少し挙げる。
- 状態の更新
- 終わったタスクを「済」にする
- わかりづらいタスク名を修正する
- ……
- タスクの更新
- 新たなタスクが必要になったので追加する
- 要らなくなったタスクを削除する
- 実行順序を変える(並び替える)
- ……
- ブレイクダウンの再実行
- 全体的にタスクが粗いので、もうちょっと細かく洗い出す
- タスク A については細かく洗い出されてないので、洗い出してみる
- ……
- ゴールの見直し
- そもそもゴールはこれで正しいか?ゴールは変化していないか?
- 変化している場合、ブレイクダウンし直す必要があるかもしれない
- ……
進捗レビューの効用
- 物事を計画的に進められる
- 物事の進捗が可視化されるため、「残りはこれだけだ」「このペースで進めれば終わる」という 安心感 がある
- 行動の実行順序が可視化されるため、「次はこれをやればいい」「この辺から潰せばいい」がはっきりとわかり、迷いがない
進捗レビューの弱点
以下の場合は進捗レビューでは対応できない。
- ゴールが不明確である
- 拘束や割り込みが激しく、落ち着いてレビューする暇がない
- 難易度が高すぎたり、無知すぎたりしてブレイクダウンできない
- 自分で進められるタスクが少ない
方向レビュー
コア(人生目的、哲学、価値観など)を見直すためのレビュー。
概要
人の性質として以下がある。
- 意味を見出せない行動に苦痛を感じる
- 例
- ひたすら穴を掘らせる拷問が存在する
- 退職動機として(たとえ給料や人間関係が整っていても)やり甲斐や意味の無さを挙げる例も少なくない
- 例
- 嫌いなことはしたくない、向いてないことはしたくない
これは裏を返せば以下のようにも言える。
- 意味があれば頑張れる、意味のために行動することは幸せである
- 好きなことや向いてることなら頑張れる、楽しい
一方で現代人は、以下背景により自身の意味や向き/不向き・好き嫌いには疎い。
- 多様な価値観、ライフスタイル、娯楽の台頭
- 変化の激しい世の中と、終身雇用など安定の崩壊
- コアの扱い方や付き合い方が教育に盛り込まれていないこと
- ……
ゆえに コアに関する意識や自覚が希薄 化しており、「自分を取り巻く不自由な常識や不条理な環境から脱出できない」「優秀で仕事もこなせるが、人生がつまらなく感じる」「恒常的にストレスが溜まっているが、何が原因なのかがわからない」といった事態が生じてしまう。
こういった問題はいずれも 実生活が自分のコアと乖離している ことで生じている。これを防ぐために、自分のコアについて知ることと、定期的に「コアに従って動けているか」「コアはこれで正しいか」を確認すること――すなわち己が人生の方向性をレビューする方向レビューが必要となる。
方向レビューの実践方法
必要なのは「コアの自覚(言語化)」と「コアを使った振り返り」の二つ。
コアの自覚 では、既によく知られた手法があるので適宜頼る。
- ミッションステートメント(7つの習慣で提唱されている自分憲法)
- やらないことリスト
- ストレングスファインダー(自分の強みとなる性格・思考回路・言動を知る診断)
- ……
ただし人生目的については、人によっては洗い出せないこともある。たとえばミッションステートメントは、そもそも7つの習慣が娯楽を丸々切り捨てるほどストイックな体系ということもあり、娯楽が無いと生きていけない人には向いていない。
コアを使った振り返り では、コア(を書いた紙やリストなど)を見ながらじっくりと内省する。この性質上、落ち着いた体調、場所、時間を確保するのが望ましい。または非日常的な機会に身を置いてリセット・リフレッシュする方法もある。これらの行動に関する、役立ちそうなネタは多数存在するが、以下に一例を示す。
- 旅行
- キャンプ
- 瞑想(休憩以上、睡眠未満のリフレッシュ方法)
- デトックス(当たり前のものをある程度の時間手放してみる)
- 一週間一切ネットを見ない
- 三日間スマホを触らない
- デジタル・デトックスのワークショップ(数日に及ぶ)に参加してみる
- ソロタイム(誰ともコミュニケーションを取らず、割り込まれもしない一人きりの時間)
- 用語はそれぞれだが「孤独の時間を確保すること」の重要性は多くの書物で説かれている
- ……
方向レビューの効用
- コアに従うことで満足度の高い人生をおくりやすくなる
- そうでもなくとも(コアと相反することで生じる)不幸やストレスを未然に回避した行動を取りやすくなる
- 人に合わせる、人と比べるといった俗世にとらわれにくくなる
方向レビューの弱点
- 弱いコアしか自覚できない人にとっては、(定期的にレビューするほどの手間をかける)意義が感じられず効果も薄い
- いびつなコアを持っていた場合、そのとおりに従うと(法を犯す、道徳に背くなど)修羅の道になることがある
おわりに
今回「レビュー」というものを未読、進捗、方向の 3 種類に分けてみたが、キレイに分けられたように思う。今後、自分の仕事術や生活方法を改善する際は、この 3 つの観点に注目してレビューしてみたい。
おそらくこんな感じで、
- 「後でやること」を忘れてしまう
- → 未読レビューを強化する
- あるプロジェクトや目標の進捗が芳しくない
- → 進捗レビューを強化する
- なんか人生上手くいってない、なんか毎日が微妙
- → 方向レビューを強化する
どの観点のレビューを使えば対処できそうかを比較的わかりやすく決められるはず。