「仕事に追われない仕事術 マニャーナの法則 完全版」を読んで知れたこと
平易な文章で、しかし具体例やエクササイズも交えながら解説されているので、とても読みやすく、わかりやすかったです。
理性と衝動。衝動の手強さ。
脳のはたらきには「理性」と「衝動」があり、いかに後者の「衝動」を抑えるかがポイントです。
メールを例にすると、新着メールが来た時に(今やっている仕事から脱線して)すぐにチェックする行為は衝動的なものです。衝動により目移りしていては、仕事に集中できません。仕事のパフォーマンスを高めるには「集中」すればいいのですが、衝動はこの集中を妨害するものです。衝動には抗わねばなりません。
衝動は「システム」によって抑えます。システムは人それぞれですが、守るべき原則はあります。本書では七原則が数ページほどで紹介されていますが、私が思うに、本書の内容はほぼ「衝動をいかにしてコントロールするか」に繋がっていると私は思います。
言い方を変えれば、本書というボリュームを費やさねばならないほど、衝動という敵は手強いとも言えます。
とりあえずやる。少しずつやる。
本書が繰り返し主張していることの一つに、「とりあえずやってみる」「少しずつやっていく」の二点があると感じました。
とりあえずやってみる
とりあえずやってみるとは、
- 「書籍を出版する」だと重たい
- 重たいからと放置していては、いつまでたっても始まらない
- まずは ほんの一歩でもいいから やってみる
- 例: 「書こうとしているネタを扱った本の有無を、五分タイマーをセットして検索してみる」
このようなことです。これならたった五分で済みます。「なんだそんなことか」と侮ってはいけません。やってみることで、具体的な進め方が見えてくるものですし、もうちょっと進めてみようとやる気が湧いてくる(いわゆる 作業興奮 )こともあります。
この「とりあえずやってみる」効果は、私も最近取り入れていて、かなり効果が高いと感じています。タスクは一番最初に取り組む時は一番腰が重たいものですが、やってみると軽くなるものです。本当にそのとおりだと思います。
少しずつやっていく
少しずつやっていくとは、「とりあえずやってみる」を積み重ねていくことです。
勉強でも一夜漬けよりは二週間前くらいからコツコツ積み重ねた方が効果が高いですが、それと同じです。毎日、集中力が尽きない程度に取り組んで、少しでも前に進むという実績と「成功体験」を積み重ねることで、確実な前進と自信(ひいてはモチベーションの向上)に繋がります。
……聞けば当たり前のことを言っているように聞こえますが、これが意外と出来ないんですよね。
ファーストタスク
「とりあえずやってみる」「少しずつやっていく」を実行するためのテクニックとして ファーストタスク が紹介されています。
これは 毎日、朝一番に、一つだけ、少しずつ進める というタスクの消化方法です。
「毎日」と「少しずつ」については、上述した二つを心がけるためですね。
「朝一番」については、朝一番のタイミングが最も集中しやすいからです。眠気が来る昼食後や、疲れてくる午後、さらには注意資源まで尽きてくる夜とは違い、朝は最も調子に優れた時間帯です。このベストタイミングに、とりあえずと少しずつのアプローチをはめこみます。
「一つだけ」については、複数の対象に手を出すと集中が分散してしまうので、ファーストタスクとしては必ず一つに絞りましょうということです。これも集中を担保するための制約ですね。
明日やる。
本書で最も重要なトピックが マニャーナの法則 でしょう。これは要するに
- (1) 今日はここまでやる、というクローズドリスト をつくる
- (2) 新しく発生したタスクは とりあえず明日に回す
この二つを心がけるというテクニックです(法則とありますが、個人や組織の心理や傾向を捉えた理論ではなく、あくまでもタスク管理のテクニックです)。
(1) は、もっと言えば「無理のない範囲で、クローズドなデイリータスクリストをつくる」とも言えます。無理のない範囲とは、たとえば定時を超えない範囲ということです。そうすれば、この日の仕事は定時内に終わります。
ただし、現実は甘くなくて、新しいタスクが次々発生しますから、それは (2) にて明日に回します。
ここで「明日に回せたら苦労しないよ」と文句を言いそうですが、 本当にそうでしょうか? と本書は問うています。体調を崩したら、たいていは休めますよね。家族が急病とか、送り迎えがあるとか、そういった用事でも休めますよね。 本当に今日中にやらなければならないほど緊急な仕事は、ほとんどない ――本書はそう言っているように聞こえます。
さらに、ありがちな疑問についても答えを示しています。
- Q: 仕事が物理的に多いんですよ
- Ans: 物理的に多すぎるのが問題です。無理のない物量にまで減らすべきです。
- Q: 締切がキツイんですよ
- Ans: それは計画的に進めなかったからです
- (あと本書では述べてませんが「そもそも約束時点でどう考えても締切がキツイ」ケースもあるでしょう。この場合はそんなケースに陥らないよう約束時に調整するべきです)
まとめると、根本的に無理ゲーなケースは、その根本を改善しないとダメ と言えます。そういえば私も(別ブログですが) 残業を減らすために心掛けることや取り組むこと - stamemo という記事を書いて、ここでも
会社や部署といった「居場所」を選びましょうという話。「残業が多くついてまわる性質を持った居場所」もあるので、そのような居場所を避けることが重要。
と書いています。根本を改善する、ダメなら逃げる。本当に大事です。本書を読んで、改めてそう思いました。
それで、(1) や (2) のやり方は?
精神的な話が続きましたが、テクニックというからには技術的なネタもあります。
以下、紹介していきます。
バッファーゾーン
バッファーゾーン とは、発生したタスクをその場で衝動的に消化するのではなく 一度、冷静に見つめて整理してみましょう というものです。
具体的には、タスクを三つの緊急レベルで分けます。
- LV1: 明日やる
- LV2: 今日中にやる
- LV3: 今すぐやる
基本的には LV1 の明日やる、になるはずです(マニャーナの法則)。一見すると LV2 や LV3 が多いように見えても、LV1 や LV2 に回せることが多いです。たとえばクライアントからの電話も、電話を取ることは LV3 ですが、通話内容から発生したタスクは LV2 や LV3 で取り組めます。あるいは、本当に集中している時は着信を無視するのもアリです。
整理するとは、そういうことです。八方美人では務まりません。
優先度は要らない
デイリータスクリストにはしばしば優先度が付いているものですが、本書では「優先度は要らない」と述べています。理由は どうせ一日で全部終わるのだから、実行順序は関係がない からです。
逆を言えば、優先度が要らない程度のデイリータスクリストを組みましょう、とも言えます。
タスクダイアリー
タスクダイアリー とは「日毎に複数行の記載スペースがある手帳や日記帳」を使ってマニャーナの法則を運用する手法です。
やり方はこのようになります。
- (1) 今日はここまでやる、というクローズドリスト → 今日のページにタスクを書き並べる
- (2) 新しく発生したタスク → 明日のページにタスクを書き加える
- (3) バッファーゾーンの LV2 LV3 のタスク → 今日のクローズドリストの最下部に下線を引き、その下にタスクを書き加える
これだけです。アナログな手帳でも実現できます。
XXXX リスト
タスクダイアリーに絡む話ですが、ルーチンタスクなどを毎日書き加えるのは苦行なので、 別のタスクリストをつくり、タスクダイアリーからは「XXXX リストを消化する」のようにポインタを貼る、という運用にすると良いでしょう。
本書ではこれを デイリータスクリスト と読んでいます。紛らわしいですね。(デイリータスクリストとは本来は「その日に行うタスク全てを並べたリスト」を意味します)
また本書では具体例として以下を挙げています。
- 退社時要チェック作業リスト
- 毎日片付けるべき仕事リスト
- 繰り返し行う仕事リスト
参考までに、私の例 で具体的な項目例を少し挙げてみると、こうなりますかね。
- 退社時要チェック作業リスト
- ノートPCを机にしまう
- 机を施錠する
- 毎日片付けるべき仕事リスト
- 勤怠管理システムの確認と修正
- 個人データバックアップ
- 繰り返し行う仕事リスト
- Firefox のブックマークを整理する
ダッシュ法
これはタスク管理というよりもタスクの取り組み方の話なのですが、本書で二章分ほど紹介されていたので、ここでも簡単に紹介しておきます。
ダッシュ法とは
一言で言うなら 制限時間を変動させるポモドーロテクニック です。
ダッシュ法の手順
ポモドーロテクニックとの違いで説明します。
まずはポモドーロ:
- 「25 分仕事する」→「5分休む」がワンセット
- 4セット繰り返したら、長めの休憩(20-30分くらい)を取る
- 目的は自分を超集中(フロー状態)に導くことなので、必ずしもセットに従う必要はない(フローに入ったのに休憩したらもったいないですよね)
続いてダッシュ法(の基本パターン):
- 5分取り組む
- それでも終わらなかったら、10分取り組む
- それでも終わらなかったら、15分取り組む
- ……
このように 5分ずつ増やしていく のが基本パターンです。この少しずつ制限時間を増やすことの意図は、まずは(上述した)とりあえずやってみるに従い短い時間でやってみて、そうすると作業興奮でさらに取り組みやすくなるから、制限時間を少し伸ばして取り組めるよね……というものです。
休憩タイミングと時間については特に規定されていません。が、 タスクをやりかけのタイミングで休憩するのが良し と述べています。なぜかというと、タスクがちょうど終わったタイミングだと作業興奮がゼロだからです。やりかけで終わると「早く続きがしたい」と興奮しているので、休憩も無駄に長くなりません。
上記の5分インクリメントは、あくまで基本パターンです。他にもパターンはありますので、自分に適切なパターンを模索すると良いでしょう。
項目 | 内容 |
---|---|
パターン1(基本。5分ずつ増やす) | 5, 10, 15, 20, ... |
パターン2(興奮の強さを反映して倍々) | 5, 10, 20, 40, ... |
また、本書ではダッシュ法で複数のタスクを次々とこなしていくやり方も紹介されています。2章費やしているだけあって、詳しくまとまっています。
最後に目的ですが、 ダッシュ法はあくまでタスクを終わらせることが目的 です。なので、きりが悪くても休憩は取るようにします。長時間ダッシュし続ける(タスクを消化し続ける)ことが重要なので、賢く定期的に休憩して持久戦に備えましょう。
おわりに
知れなかったことも学べましたし、大切な心がけ(そもそも無理ゲーは避ける)も改めて自覚できたので、本当に買って良かったと思います。
p.s. いつもなら睡眠に向けてクールダウンする時間なのですが、本記事は 1.5 時間くらいで一気に仕上げたので結構しんどいです(苦笑) 以下タスク管理ツールのログです。
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