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メモについてあれこれ試す前にまずは基礎力を身に付けようという話

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仕事にせよ私生活にせよメモすることは大事です。巷にも多くの記事や本があり、様々なテクニックやらノウハウやら工夫やらが紹介されています。しかし僕が思うに、そういうことを試す前に、まずはメモの「基礎力」を身に付けるのが先です。

基礎が身に付いていないと役に立たない

野球のテクニックを教わったところで、そもそもボールを投げたりバットを振ったりする基礎が身に付いてないと話になりません。メモもこれと同じで、いくらメモに関するテクニックやら工夫やらを知ったところで、基礎が身に付いてないと行動に移せないと僕は思います。

極端な話、タイピングができずに、1本指でキーを探しながら打つ人がいたとして、この人がパソコンでメモを取れるかという話ですね。この人のやるべきことは、メモについて学ぶのではなく、基礎(この例ではタイピングスピード)を身に付けることです。

メモを支える 3 つの基礎力

メモにおける基礎とは何でしょうか。 3 つほどあります。

  • (1) すぐに書くことのできる技能と環境
    • 技能:筆記やタイピングなどの速さ
    • 環境:紙やペン、テキストエディタなど環境や道具を整え、すぐに利用開始できること
  • (2) 無駄なく要点のみを書く要領
    • 必要最小限の手間で、必要十分のヒントを残すということ
  • (3) あとで読み返す習慣
    • メモは一時的なものであり、読み返して何らかの行動をした後は捨てるべきもの
    • 読み返すことを忘れると、メモはゴミになる

つまり 記入スピード記入対象の取捨選択読み返し の 3 つです。

(1) 記入スピードを身に付けるには

記入スピードを構成する要素には「技能」と「環境」があります。

  • すぐに書くことのできる技能
    • 技能:筆記やタイピングなどの速さ
    • 環境:紙やペン、テキストエディタなど環境や道具を整え、すぐに利用開始できること

技能については、 地道に練習を重ねるしかありません。筆記にせよ、スマホにせよ、キーボードにせよ、一朝一夕には身につきません。1日10分(できれば1日30分)でもいいので、継続が大事です。

環境については、 細かいノウハウはおいといて、まずは自分にとってやりやすいように 整えましょう。いきなり、どこぞの記事や本で紹介されているような、システマチックなやり方を取り入れると失敗します。まずは未熟でも稚拙でもいいので、自分なりにメモを取りやすくすることを目指します。そうやって経験を積むことで、色々と見えてきます。取り入れるのはその後でも遅くないです。

「自分にとってやりやすいように」といっても、大したことはしません。「あ、打ち合わせの最中はメモを取る機会が多いからメモ帳を持参した方がいいな」「ボールペンよりもシャーペンが書きやすいからシャーペンにしよう」「メモはとりあえず、デスクトップにおいた "メモ.txt" に貯めるか」くらいでオーケーです。

(2) 「記入対象の取捨選択」を身に付けるには

続いて 2 つ目の基礎についてです。

  • 無駄なく要点のみを書く要領
    • 必要最小限の手間で、必要十分のヒントを残すということ

これは要するに 記入対象をいかに取捨選択するか という話です。

記入対象の取捨選択とは

突然ですが例を一つ。以下のクイズに答えてみてください。

会社員であるあなたは、自席が散らかっていることに悩んでいます(私物が多く、引き出しも机も散らかっている)。先日、全社員に個人ロッカーが配布されました。ある時、あなたは「あ、個人ロッカーが配布されたんだよな。荷物はそこにぶちこめばいいじゃん」とひらめいたとします。忘れないようにメモを取っておきたいです。さて、どんなメモを取りますか?

基礎力が身に付いているのなら、答えはおそらく

ロッカー

これくらいか、あるいは「荷物 ロッカーに」のように、一言になるはずです。なぜなら、ロッカーという文字を見ただけで「自席の私物を打ち込む」という作業を思い出せる からです。人間はそこまであんぽんたんではありません。ヒントさえ示せば、思い出せます。

逆に、以下のようなメモは、

私物を整理するために、以前配布された個人ロッカーにそれらを入れる

無駄がありすぎて論外です。メモに時間がかかりすぎる。この例だけなら構いませんが、現実は何度もメモしますし、すばやくメモしないと務まらないシチュエーションもあります(議事録や既に集中している時にふと思いついたことのメモなど)。メモは、後で自分が思い出せる程度に最小限にするべきです。

取捨選択の要領を鍛えるには

本題に入りましょう。

では、この「メモする対象を取捨選択する」要領を鍛えるためには、どうしたらいいのでしょうか。

残念ながらこれも一朝一夕には身に付きません。

鍛え方としては 縛りプレイ をおすすめします。

「一つのメモにつき、使えるのはキーワード 3 つまで!」

というふうに、制約を課すのです。そうすればメモする度に「キーワード 3 つしか使えないぞ」「どんなキーワードを使ったら、後で見た時に思い出せるだろうか」といちいち工夫することになりますから、(ちゃんと制約を守ったのなら)イヤでも取捨選択の経験が増えます。良い訓練になります。

※ただしキーワード数制約を課すべきではないシチュエーションがあることにも注意しましょう。たとえば「新しい企画をつくるために、まずはひらめいたアイデアを全部書きだしてみよう!」といった場合は、3 つのみに絞る意味はありません。

(3) 「読み返す」を身に付けるには

意外と見落としがちなのが、書いたメモを読み返すというプロセスです。

  • あとで読み返す習慣
    • メモは一時的なものであり、読み返して何らかの行動をした後は捨てるべきもの
    • 読み返すことを忘れると、メモはゴミになる

せっかく書いたメモも、後で読み返さなければゴミと化します。

そもそもメモとは一時的なもの

そもそもメモとは 今対処するのは難しいから、後で対処するために、とりあえず「なるべく小さな手間で」「必要な情報だけを」「一時的に」記録しておく ことです。とりあえず記録しておけば忘れません。忘れさえしなければ、後でいくらでも対処できます。メモとは 忘れる、という最悪の自体を防ぐための暫定処置 なのです。

したがって、書いたメモを後で読み返す行動が必要です。

「読み返す」を身に付けるための第一歩

さて、この「読み返す」ことを身に付けるには、どうしたら良いのでしょうか。

習慣化してしまう のが無難です。もちろん、頭だけだと忘れてしまうので、外部ツールに頼ります。リマインダー(アラーム) を使って、「メモを読み返せ!」という用件を設定しましょう。

たとえば、

カレンダーやアラームで、毎週日曜日の午前 10 時に、「メモを読み返せ!」という用件を設定する

こうしておけば、毎週日曜日の午前 10 時に「おう、そうだったな、メモを読み返そう」と気付けます。

一週間だと長過ぎる場合は、極論毎日でも構いません。別にデジタルツールでなくとも、居間のドアに付箋を貼り付けておく(そうすれば必ず目に入る)などでも良いです。とにかく、定期的に読み返すことを忘れないような仕掛け をセットしてください。

必要になったらメモを探して読めばいいのでは?

ここで、よくある疑問として

「別に定期的に読み返さなくても、必要になったらメモを読み返せばいいのでは?」

があります。

結論を言うと、ダメです。

それはメモではなく資料の話です

いつでも後で読み返せる情報は「資料」と言います。資料は、読みやすいよう、しっかりと整えられたものです。資料は言わば永続的な記録とも言えますが、 メモを取る(一時的に素早くヒントを残したい場合)段階でつくるものではありません。もし、つくっているのだとしたら、それはもはやメモではなく資料作成です。メモとしては無駄がありすぎる行為なので、やめましょう(2 つ目の基礎力「取捨選択」が足りてません)。

資料をつくるタイミングは メモを見返している時 です。一時的に素早く記録したメモを読んで、永続的に利活用できる資料をつくるのです。

  • スピード重視の一時的記録 ← メモ。必要な時にやらざるをえないので、素早くやる
  • 利活用重視の永続的記録 ← 資料。時間のある時に、あとでやる

という使い分けが大事です。混同してはいけません。

ちなみに「一時的に素早く記録するスピードで、永続的な記録ができたとしたら、それに越したことはないよね(後で読み返す必要はないよね?)」という意見もありますが、これはそのとおりです。そんな芸当ができたら、の話ですが。

おわりに

メモの基礎力を 3 つに分けて取り上げてみました。

メモがいちいち上手くいかない、という方は、まずはこれら基礎力を鍛えてみることをおすすめします。