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ソロ充を目指すソロ男にこそ読んでほしい「超ソロ社会」

前々から読んでみたかった「超ソロ社会」。ソロ社会に関するデータや考察も面白いですが、ソロ充として生きるためのヒントもあり、一人のソロ男として有益でした。そんな本書の内容と感想について、簡単にまとめてみます。

本について

超ソロ社会 「独身大国・日本」の衝撃 (PHP新書)

超ソロ社会 「独身大国・日本」の衝撃 (PHP新書)

超ソロ社会 「独身大国・日本」の衝撃(著:荒川 和久)

本の要点

まずは本書の内容や要点について簡単にまとめます。

どんな本?

約20年後、人口の半分が独身という国に日本はなる。

本書はソロ(独身)の増加が避けられない、ということをデータを用いて解説しています。登場する図表が 40 以上。これを第一章から第四章で解説します。

続く第五章ではソロたちの消費傾向を取り上げています。ソロとはいわば一大市場でもあり、マーケティングとして無視できないレベルの規模であることを本書は指摘します。

そして最後、第六章ではソロ社会の未来について論じて、ソロで生きる力が必要となると結論付けています。

ソロ(独身)の内約

ソロというと一度も結婚したことがない未婚者をイメージしますが、実際は離婚者や死別者も含んでいます。むしろ高齢化社会だけあって、死別者が多いことを著者は指摘します。

ソロで生きる力が必要

超ソロ社会を生きていくためには「ソロで生きる力」が必要だと著者は述べます。

ソロで生きる力とは、精神的に自立することです。もっと言えば、以下の二つです。

  • (1) パートナーだけに依存しない
  • (2) 広く浅く、色んなコミュニティや人と繋がっておく

(1) については、大企業への依存(大企業に勤めたら定年まで安心して暮らせるよね)が危ないように、パートナーへの依存もまた危ないということです。パートナーと離婚したらどうします?死別したらどうします?ソロに戻ってしまいますよね。こういった例は、データという形で多数存在することが示されています。他人事ではないのです。

(2) については、色んなコミュニティに顔を出し、人と関わることでも人は満たせる、という話です(この行動の意義は続く「分人」の項でもまとめます)。

分人

著者は作家、平野啓一郎の「分人」という表現を紹介しています。

分人とは何かというと、個人は色んな顔を持っており、本当の自分とはそれぞれの顔の構成比のことである、とするスタンスです。

分人について知らず、一つの顔(特に自分がアイデンティティだと信じてやまない顔)にこだわると苦しいです。無理をせず、顔を受け入れることが大事です。たとえば会社の飲み会を楽しむ顔があるのなら、そういう分人がいるのだと受け入れます。その上で、構成比率を変えていけばいい。飲み会が足りないなら参加頻度を増やせばいいし、多すぎて面倒くさいなら減らせばいい。

そうやって比率を調整することが、ソロにとっては重要です。ソロは自分に厳しく、えてして自分のアイデンティティ(特にソロで在り続けること)を追求しがちですが、所詮人間、承認欲求などもあります。分人を発見し、受け入れ、比率を変えていく生き方が無難です。

ちなみに分人は、他人と接することでしか生まれません。分人とは、自分だけで気付けるものではなく、他者と比較して相対的に判明するものだからです。

感想

本書を読んで思ったこと、感じたことなどを感想という形で記します。

(Good) ますますソロでいたくなった

「とりあえず結婚すればすべてうまくいく」かのごとき論調が繰り返されている

僕もその論調に惑わされている一人でした。頭では「そんなことわかっている」と思っていても、どこか結婚に憧れるところがあった。本書は、データや考察という形で、そんな甘い妄想を打ち砕いてくれます。

ますますソロでいたくなりましたねえ。

(Good) 読み物として面白い

本書は江戸時代の結婚感や生活に言及していたり、第三章では「男たちはセックスできなくなったのか」「男たちは告白ができなくなったのか?」といったトピックもあったり、また他国の事情を覗いてみたり、と図表データをベースに、あちらこちらを行き来します。

読み物として純粋に面白いです。

(Good) 自分の行動をわかりやすくネーミング

第五章では、人間の根源的欲求として承認欲求と達成欲求を挙げています。

僕はライフハックが好きな人間で、習慣やルールを取り入れて自分を縛るのが好きです。僕はこれを When タイプと名付けましたが、

著者はもっと単純に「達成欲求を満たせているからでしょ」と説明しています。これを読んで僕は「なるほど」と腑に落ちたものです。自らつくったゲームを自ら達成することで自らを満たしているんだな、と。

他にも著者は、消費の質がモノ消費、コト消費からエモ消費(エモいを消費する)になってきていると説明し、このエモ消費を満たすのに承認と達成が必要、という展開をしています。

なんといいますか、頭で薄々わかっているようなことを、平易な言葉でわかりやすく説明しているところが痛感です。読んでて気持ちいい。

(Good) アイデンティティへの依存と分人

僕はぼっちとして、ソロ充として、一生ひとりで生きていこうと決意していますが、たしかに苦しいんですよね。一方で、ちょっと人付き合いしてみると、案外そこを楽しむ自分もいたりします。たとえば年末年始では家族と過ごし、可愛い甥を見ることが楽しかったですし、また帰りたいと思ってしまいました。

そういう僕の顔(分人)もある、と受け入れることが大事なのだと本書は教えてくれました。受け入れた上で、比率を調整していく。年末年始だけじゃ足りないなら、帰省頻度を増やせばいいし、逆に一年に一回でも面倒くさいのなら、数年に一回に減らせばいい。

このように「分人発掘」と「比率分配」をもっと拡張すること。色んな場所に足を運び、色んな人と出会うこと――。

ソロ充を目指している僕だからこそ、意識したいと思いました。

(Bad) データばかりで疲れる

第一章から第四章までは図表をふんだんに盛り込んだ解説が続きます。見解の中には、著者が注意深く考察したものもあり「本当に正しいのかこれ?」と追いかけてみたくなりますが、まあ数字やグラフとの戦いなので疲れます。実際、途中から僕は細かい読み込みはスキップして、文章だけ追いかけていました。数字嫌いな方には辛いです。

ただし、文章だけでも平易に読めるので、気にならなければ(著者を全面的に信用してもいいなら)極端な話、図表全てをスキップして読んでも良いとは思います。

おわりに

読み物としての面白さから、ソロとして生きるための実用的アイデアなど、多方向に有益な本でした。平易で読みやすかったですし、間違いなく買って良かったと満足しています。

ソロ充の方も、ソロ充を目指そうとしている方も、あるいはソロの生態から「なぜ独身が多いのか」に興味がある方まで、色んな方が楽しめる一冊だと思います。

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